「苦しい業界」なのに、なぜ二極化するのか

経営戦略

先日、友人の紹介で、ある信用金庫の支店長にご挨拶してきました。

私が運送業の経営支援をしている、という話から、業界の話で盛り上がりました。

そこで出てきたのが、こういう話です。

「運送業は、苦しい。でも、はっきり二極化している」と。

苦しい業界なのに、二極化する。 これ、よく考えると不思議な話です。 みんな同じように燃料費が上がって、同じように人手が足りない。 条件は同じはずなのに、伸びる会社と、沈む会社に、くっきり分かれていく。

なぜでしょうか。

支店長と話していて、その背景にある”構造”が見えてきました。

ひとつは、世代交代です。 創業者がしっかり握っていた頃の管理や秩序が、代替わりで少しずつ緩んでいく。 「なんとなく回っている」状態が、いつの間にか定着してしまう。

もうひとつは、高齢化です。 現場を見渡すと、運転手さんは60代が当たり前。社長は70代。

そして、いちばん切ないのが、この矛盾でした。

「仕事は、ある。でも、それを運ぶドライバーがいない。  古くなったトラックを買い替えるお金もない。  ……いつまで続けられるか、正直、不安だ」

需要はあるんです。声をかけてくれる荷主もいる。 なのに、それに応える”体力”が、会社からじわじわ失われていく。 希望と不安が、同じ場所に同居している。

さらに重たいのが、これでした。

「引退したくても、借入が残っているから、辞められない」

ここに、運送業のいちばんつらい”出口”の問題があります。 体力的にはもう限界が近い。でも、借金を返し終えていないから、降りられない。 誰かに譲ろうにも、数字が整理されていない会社は、引き受け手が見つからない。

――では、二極化の”伸びる側”は、何が違うのか。

私の見ている限り、答えはシンプルです。

自社の数字を、ちゃんと「判断に使える形」で持っているかどうか

今、1台走らせていくらの利益が出るのか。 どの荷主が、本当に儲かっているのか。 この借入は、あと何年で返し終わるのか。

これが見えている会社は、手を打つのが早い。 見えていない会社は、気づいたときには選択肢が消えています。 (ちなみに、その”気づくのが遅れる”話は、前回の「2か月後に表示される体重計」と同じ構造です)

苦しい業界だからこそ、数字が経営を分ける。 そして、出口(事業承継・引退)を考え始めるなら、いちばん最初にやるべきは、 特別なことではなく、
自社の数字を”見える化”しておくこと
なんだと思います。

信用金庫の支店長と話しながら、改めてそう感じた一日でした。

株式会社京都みえる化デザイン研究所
中小企業診断士 平澤貴啓